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ほほほ。
なんだか、ずっと続きそうだぁ。
脱線ぎみですが、「つづきはこちら」
からどうぞ。
拍手ありがとうございます。
すごっく、嬉しい~~よ~~~!!!
>ひゅうさんへ
コメントありがとうございます!
全然、寂しくなんかないですよ~~!
ひゅうさんのお言葉に、嬉しくって、温まってます。
私は、もっぱらパソコンで、携帯で、サイト巡りなんて
きっと無理。スマホなんて、同僚のを見て、
へぇ~~~っの連発でした。ははは
後で、サイトとか読み直すと、誤字・脱字が一杯見つかって
恥ずかしい限りです。m(_ _)m
ゾロたし語ってください!一緒に、楽しも~~!
4
げえっ、えっ・・・うえっ・・・
グランドの隅で、吐き気と戦っているのは、練習途中のゾロだった。
ちきしょう、追い込み過ぎたか。
大会の10日前、長距離を走るゾロは、限界まで身体を持っていく為、
普段より相当きついトレーニングを自分に課していた。
ここ数日、あまり眠れていなかったせいか、今日の練習で、
気持ち悪くなる程、調子が悪かった。
「大丈夫ですか?ゾロ先輩。」
声をかけてきたのは、どうやら陸上部のマネージャーらしい。
「え?あぁ。・・・えっと・・・」
口元を拭いながら、身体を起こすが、名前が出てこない。
確か、一年の・・・
ゾロの表情を読み取ってか、
「ペローナっ!まったく、いい加減、覚えろ!」
水の入った、紙コップを差し出す。
口をすすいで、吐き出すと、だいぶスッキリした。
「サンキュ・・・」口を拭いながら、身体を起こす。
「そこまで、追い込んだら、回復できなくなるだろっ!
少しは、練習メニュー考えたらどうだっ!」
こいつは、口の利き方を知らないのか。
初めて、顔を合わせた時に思ったっけ。後で聞いたら、外国暮らしが長かったせいで、
敬語の使い方がイマイチらしい。
イマイチどころか、これじゃ、側で聞いてる方が、ハラハラするぜ。
くっくっと、笑い出す。
言ってることは、間違ってないか。
口は悪いが、合宿の時も、よく働いていたし、意外に、いい奴かもしれないな。
「もう、大丈夫だ。心配してくれて、ありがとな。」
「し、心配じゃない!マ、マネージャーとしての注意だっ!」
照れながらそっぽを向く姿が、ゾロの気を緩ませた。
しっかりしろよ。
今は、目の前の大会に集中するだけだ。
ゾロは自分に言い聞かせた。
何も考えたくなかった。
限界まで、自分を追い込んで、
帰ると泥のように眠った。
もう、いいだろ。
忘れろよ。
オレに何ができるんだ。
グルグルと答えの出ない想いだけが、頭を巡っていた。
******
たしぎは、どうしても今日、ゾロに謝りたかった。
許してくれなくてもいいから。
ちゃんと謝らないと、それだけ思ってグランドに足を運んだ。
6限が終わった午後3時半頃だった。
「ゾロ先輩は、ロードワーク中だぞ。」
いきなり声を掛けられて、驚いて振り向くと、
可愛らしいマネージャーらしい学生が、こちらを睨んで立っていた。
手には、部員達の水筒が入ったカゴを抱えている。
肩には、タオルが詰まった大きなバッグを下げている。
「何か、用か?
あんまり、アイツに余計な事言うな。今、大会前で、
大切な時期なんだからな。こないだまで、すんげぇ、調子悪くて
大変だったんだから。」
ロロノアをあいつと呼ぶその子は、陸上部のマネージャーというだけでなく、
本気でゾロの事を案じているのが分かった。
試合前の大事な時なんだ・・・
「特に、用事っていうほどでも、ないから・・・
いいんです。」
待ったとしても、なんだか、きっと話せない気がして、グランドから離れた。
簡単にくじけてしまった自分が情けなくて、更に気が重くなった。
そのまま、真っ直ぐアパートに帰る気がせず、
たしぎは、反対方向の電車に乗った。
すぐ次の駅で降りると、朧気な記憶を頼りに、店を探す。
「オールブルー」の看板を見つけた時には、正直ホッとした。
良かった。これで迷ったら、泣きたくなってしまいそうだったから。
カラン。入口のドアを開けると、
夕食にはまだ早い時間で、店内は空いていた。
「いらっしゃい。うわぁ~~!来てくれたんだね。嬉しいなぁ。たしぎさん。」
サンジが満面の笑みで、迎えてくれた。
サンジの言い方が、大袈裟で、思わず笑ってしまった。
そして、この日初めて心から笑ったことに気づいた。
カウンターには座らず、窓際の二人掛けのテーブルに着いた。
「今日は、一人なんだ。」
サンジが水をテーブルに置く。
「ええ。」
顔を外らし、窓の外に目をやる。
「カプチーノと・・・この、チョコレートケーキ下さい。」
明るく、注文を告げる。
「かしこまりました。」
何も聞かずに、サンジがカウンターに下がっていく。
ホッとして、背もたれに身体を預ける。
道行く人達が、皆んな幸せそうに見えてしまう。
店内に、コーヒーのいい香りが漂う。
少しだけ、目をつむると、ここで、ロロノアと食事した時の事が
目に浮かぶ。
バッグからは、ゾロに貰ったカエルのマスコットがぶら下がった携帯が顔を
出している。
「お待たせしました。」
カプチーノの泡に描かれた顔に、思わず微笑む。
「可愛い。」
「お気に召しました?」
軽くウィンクをすると、手際よくカップとケーキの皿を給仕して、
「ごゆっくり。」と下がる。
私、よっぽど、落ち込んでいるように見えたのかな?
ケーキとカプチーノは、たしぎの心も暖めてくれた。
「ケンカでもしたの?」
顔を上げると、側にはサンジが立っていた。
全然、気付かなかった。
ぼう~っとしてた。
サンジの口調に、構えることなく自然に答える。
「・・・怒らせちゃったみたい。
私が、悪いんです。」
「話し、したの?」
たしぎは、首を振った。
「今日、グランド行ったんですけど、
大会前で・・・」
「いらっしゃいませ。」
ビビの明るい声が響く。
さっきまで、サンジ一人だったようだが、
バイトの時間だろうか。もう6時を回っている。
そろそろ、店も忙しくなる時間なのだろう。
邪魔をしちゃいけないと、席を立とうとした。
「たしぎさん、俺が戻ってくるまで、
帰っちゃ駄目だよ。いい?待ってて!」
慌ててたしぎを制すると、カウンターに戻っていった。
キッチンの奥の、オーナーに声をかけると、
コーヒーを煎れだす。
お盆にコーヒーポットとカップ、そしてコーラの瓶を置くと
たしぎにウィンクしながら店を出ていった。
「どうぞ。」
顔をあげると、ビビがコーヒーをテーブルに置く。
「あ、私、頼んでません。」
焦るたしぎに、ビビがにっこり微笑んで、
「サンジさんから、『これ飲んで待ってて。』 だそうです。
だから、遠慮なく、召し上がってください。」
「でも・・・」
ふふふと笑いながら、
「いつも、あんな調子なんです、サンジさんって。
女の人には、ほんと優しいんですよ。」
しばらくしてサンジが戻ってきた。
料理はオーナーが担当しているようだ。
ビビが忙しくホールを歩き回っている。
たしぎは席を立ち、会計をすませようと、
戻ってきたばかりのサンジに伝票を渡す。
「あの、ご馳走さまでした。」
ペコリとお辞儀をする。
「いいって。それより、少しは役立つ情報。」
ウィンクしながら、サンジが耳元で囁く。
「11月11日だって。」
「?」
なんの事か分からず、首をかしげると、
「あいつの誕生日。」
「なんかの切っ掛けには使えるんじゃないの?
大丈夫だから。きっと上手くいくって!」
サンジの気遣いが嬉しくて、なんだか本当に
大丈夫のような気がしてきた。
「あ、ありがとうございます。
本当、今日来て良かった。」
「こちらこそ、此処に来てくれて、ありがとう。
いつでも、大歓迎だよ。たしぎさん。」
「・・・今日、私、誕生日だったんで・・・嬉しかったです。」
消え入りそうな声で、そう告げると、
はにかんだ笑顔を見せ、出ていった。
隣りのフランキーハウスから、たしぎが帰る様子を眺める二人。
ロビンとフランキーだ。
ほんの、十数分前のこと。
「ロビンちゃ~~ん!今日も一段と綺麗だね~。」
といつものように歯の浮くような台詞を吐きながら、
サンジが店にやって来て、ロビンの前にコーヒーを置いた。
「あら、今日は頼んでないけど、ふふ、何か、頼み事?」
読んでいた本から、顔を上げる。
「鋭いね。そこが、また素敵なんだけど。ほらよ。」
サンジがフランキーに向かってコーラの瓶を投げる。
「わっ、バカ!」フランキーは瓶をキャッチして睨む。
それでも、栓を抜くと、吹き出る泡も気にせず一気に飲み干した。
「ちょっと待ってて。」
何やらサンジに聞かれて、奥に消えるロビン。
すぐ戻り、サンジに小声で何か伝えた。
「ありがとう、ロビンちゃん。このお礼は、またゆっくり。」
礼を言うと、店に戻って行った。
フランキーがロビンを見ると、聞かれる前に話し出す。
「ほら、ゼファーのゾロ。この間来てた、彼女が仲直りしたいから、
何か有効な情報はないかって。」
「いいのかよ、個人情報なんたらとか・・・」
「あら、店で誕生日がゾロ目なんだって、話してたでしょ。
それを覚えてただけよ。」
何事もなかったように笑うロビンに
フランキーは、ま、いいかと作業に戻った。
「あと、本籍に、未成年だから、親御さんの住所、氏名、連絡先。
ん~~、そんなものかしら。」
「おいっ!」
思わず、フランキーが声をあげる。
「ふふふ、冗談よ。」
そう言って、また読みかけの本を手に取るロビンだった。
「よかったみたいね。」
「ああ。嬉しそうな顔してらぁ。」
「上手くいくとは、限らないけどね。」
「・・・おぃ。」
「冗談でしょ。」
軽く睨むロビンを見て、フランキーは笑った。
〈完〉