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episode13 その2
ドゴ~~~ンッ!!!
ものすごい爆音がして、部屋の扉が破壊された。
外から熱気とともに空気が流れ込んでくる。
「なんだっ!?」
一斉にこの場所にいた麦わらの一味が立ちあがる。
サンジ、チョッパー、ナミとウソップだ。
子供達の泣き叫ぶ声が聞こえる。
「きゃ~~~っ!!!助けて~~~!」
「え~~~ん、こわいよ~~~!」
「また、捕まっちゃうの~?」
「大丈夫!ここから、みんな一緒に連れ出してあげるから!
怖がらないで!!!」
大きな声で、安心させようとしているのは航海士ナミ。
「今ので、怪我した奴はいないかっ?」
船医のチョッパーも、子供たちの様子を気遣っている。
煙とともに熱風が頬にあたる。
少なくとも毒ガスではないようだ。
「ここは、危険だ。R66に向かって急ぐぞ!みんな。」
奥の通路を確認してきたウソップが子供たちを誘導する。
私が出来なかった任務を麦わらの一味がやっている。
たしぎは、ボーッとする頭で、その光景を眺めていた。
私は、こんな所で何をやっているんだろう。
何も出来ずに・・・
たしぎは、ふらふらと立ち上がると
壊れた扉に近づいた。
燃えているのか、空気はきな臭く、ぱちぱちと
はぜる音が聞こえてくる。
そして、何よりも、熱を孕んだ大気が息苦しい。
遠くの方で、何やら人影が激しく動いている。
じっと、目を凝らす。
黒と白の煙の中、見えた姿は
スモーカーとヴェルゴだった。
スモーカーさんっ!!!
たしぎは拳を握りしめた。
心の中で叫んではみるものの、
身体が動かない。
「うわ~~~~っ!!!」
大声とともに、何かが、施設の真横から壁を突き破って、飛んできた。
ゴロゴロゴロと転がったかと思うと、
「くっそ~~~!!!」
と言いながら立ちあがる。
麦わらのルフィ。
きょろきょろと周りを確認したルフィと
目があった。
「あっ!お前、そっちはどうだ!?」
「え?!」
たしぎは、動けずにいた。
ルフィは、たしぎの返事も待たずに
スモーカーとヴェルゴの方を見やった。
しばらく、じっと何か考えていたようだったが、
大声で飛んできた方向に叫ぶ。
「ゾロ~~~ッ!!!こっちだ。
そいつは俺一人で相手する。
お前は、あいつを!ケムリンが危ねぇ。」
シュッと目の前に、黒い影が飛んできた。
二本の刀を両手に構え、口に和同一文字を咥えたロロノア・ゾロだった。
たしぎは、本気で構えたゾロの姿を目にしたのは
これが初めてだった。
手ぬぐいの下から覗く目つきは、摩獣と呼ばれるのがふさわしい。
背筋がゾクッと震える。
「ルフィ、お前一人で片がつくのか?」
「あぁ、平気だ。それに、もうすぐトラ男が戻ってくる。」
ルフィが二カッと笑う。
「信用できんのか?アイツは。」
「まあな。」
「ふんっ、お前がそう言うなら問題ねぇ。
じゃ、オレはあっちを片づける。」
そこで、やっと、その場に立ちすくむたしぎに気づく。
「・・・・」
無言で、たしぎを見つめると右手の鬼鉄を鞘に納める。
よく見れば、腰には四本分の鞘。
そのうちの一本を鞘ごと外すと、黙ってたしぎに差し出した。
たしぎは、目の前の刀を見つめる。
時雨だった。
何故、時雨をロロノアが?
ゾロの顔からは、何の想いも読み取れない。
「ルフィ!来たか!」
「おう、サンジ!子供たち、頼んだぞ。」
「任せろ。」
サンジは、動けないでいるたしぎに声をかける。
「早く!ここは危険だ。」
「この、クソマリモ!レディを足止めすんじゃねぇ!」
とゾロを睨みつける。
「これ、お前んだろ。」
黙っていたゾロが、口を開いた。
これは、私の刀だ・・・
私の時雨。
ゆっくりと、手を伸ばして時雨を掴む。
受け取ったたしぎを見て、ゾロは少しだけ笑った。
「先、行くぞ。」
誰に向かって言った訳でもなく、小さくつぶやくと
一瞬で、見えなくなった。
「さ、たしぎちゃん!早く逃げるんだ!」
サンジが手を差し出す。
時雨を胸に抱えたたしぎが振り返る。
「・・・ごめんなさい、サンジさん。
私、これでも海軍なんです。」
すまなさそうに、笑うと、背をむけて
さっと駆け出した。
燃え盛る炎と煙の戦場へと。
*****
「ったく、焚きつけてんじゃねぇよ!」
サンジは大きく吸い込んだ煙草のケムリを
吐き出した。
「テメェが、引きずり出したんだ。責任取れよ!」
遠くで上がる爆炎を睨みつけながら、サンジが呟く。
「ほんと、隙だらけだけど、折れないひとだなぁ。」
煙草をくわえ直すと、背を向けて、先に行った仲間を追った。
〈完〉
あとがき
サンジくんは、手を差しのべるけど、
ゾロが差し出すのは、時雨かなと
思ったお話でした。
もう、なんも言わなくていい!
ただ、時雨を渡すだけでいい。
それで、たしぎは立ち直るから!(笑)
きっと。