[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
カツッ、カツッ、蹄の音がゆっくり止まる。
辺りは、不気味な静けさに包まれている。
前を向いたまま、ゾロが口を開く。
「たしぎ・・・死ぬなよ。」
「・・・ロロノアも。」
「ああ。約束だ。」
たしぎの頬が、ゾロの背中に触れる。
前にまわしたたしぎの手に、ゾロの手が重ねられる。
「行くぞ。」
「はい。」
二人は、戦いの中へ身を投じるべく、馬を走らせた。
*******
「うっ!」
時雨が飛ばされた。
右腕が痺れ、動かない。
「たしぎっ!」
ゾロの声に、はっと顔をあげると、
「これを使え!」と、刀を投げてよこした。
和道一文字だった。
たしぎは、これがゾロにとって、どういう刀なのか知っていた。
受け取って、暫く何も言えず、つっ立っていた。
「ボケっとしてんじゃねえっ!」
ゾロが叱り飛ばす。
「死ぬな!約束だろっ!」
たしぎは、頷くと、すっと刀を抜く。
はい、私とあなたとの約束でしたね。
刀を構えた瞬間、驚愕した。
その切っ先までが、自分の身体の一部のように感じられた。
鋭い。
速い。
なんて刀だ。
「ぐずぐずすんな、行くぞ。」
ゾロが駆け出す。
時雨を拾い、腰に納め、遅れまいと、その背中を追う。
かつては、とらえる為に追った背中を、
今は同じ目的の為に追っている。
不思議な感覚だった。
走っていたゾロが、すっと手でたしぎを止める。
前方に見えたのは、シリュウの姿だった。
「どうやら、ここまでのようだな。
おまえは、早く、海軍の奴らと合流しろ。
こいつは、オレの相手だ。」
相手をじっと見据えながら、ゾロが告げる。
たしぎは何も言えずに、すっと和道一文字を差し出す。
「これを・・・」
たしぎを見て、無言でそれを受け取る。
大きい瞳で、じっと見つめる。
「約束ですよ。」
ゾロが、微笑む。
「ああ。」
今は、何も言うまい。
また、再び会ったときに、それはとって置く。
お互いの胸に想いを秘めて。
〈完〉