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ペプシNEXのCM、勘違いしてて、今日からだとは思わずにいて、
思わず、のけぞりました。(喜)
「さよなら傷だらけの日々よ」 やっほ~~い!
昨日のゾロ考察より、
妄想してみました。
あれだけの傷を負い、一度は命をも捨てる覚悟をしたゾロ・・・のお話
「この手を離す」
「つづきはこちら」からどうぞ
その日、部屋に戻ったたしぎは自分の目を疑った。
ベッドに腰掛けている男、ロロノアが居る。
「な、何やってるんですか?」
その声にゾロは顔を上げ、目を開ける。
「って、ここが何処か分かっているんですか?
海軍の船ですよ!いったい、どうゆうつもりなんですかっ?!」
ゾロは、まくし立てるたしぎを、黙って見つめたままだ。
たしぎは、自分の声に反応して、誰かに気づかれるかもしれない事に
気付き、慌てて声を潜める。
「ロロノア、どうしたんですか?」
少し落ち着いて、ゾロの元へ歩み寄る。
「たしぎ。」
ようやく口を開いたゾロは、なんだかいつもと違っていた。
「お前に、会いに来た。」そう言って、たしぎに向けたニヤリとした笑顔は、いつものものだった。
たしぎの中で、警告が鳴る。
「大丈夫ですか?」
ゾロの傍らに立つと、シャツの間から身体中に巻かれた包帯が目に入る。
「その傷・・・」
「ああ、少しやられた。」
答えるゾロの表情は、少し苦しそうで、心なしか、呼吸が早い。
「横になっててください。」
ゴロンと仰向けに寝転がったゾロの側に腰掛ける。
頬に手をやる。
少しばかり、熱っぽい気がした。
「・・・・」たしぎが、何か言い出そうと口を開いた瞬間、
「なぁ、抱いてくんねえか。」
ゾロが、遮るように、訴える。
この男は、またどんな死線をくぐり抜けてきたのだろうか。
言葉にならない想いを飲み込んで、ゾロの方に向き直る。
静かに、両手で頬に触れる。いたわるようにやさしいキスをする。
自分の不安を、ゾロの熱で溶かして欲しかった。
ゾロは壁に背をもたれ、たしぎに身を任せていたが、
応える指先も、唇も、舌も、全てが貪欲だった。
おまえのすべてが欲しい。
そう言っているように、全身でたしぎを求めてくる。
たしぎは、心の奥に湧き上がる不安を押しとどめながら、
ゾロの求めに応えていく。
何も知りたくなかった。
ただ、ゾロの渇きを満たしたかった。
いや、この怖さをロロノアに消し去ってほしかった。
*******
「ん・・・ああ・・・」
こらえ切れずに、上げた声と同時に、ふっと意識が途切れる。
カタッ。椅子が動く音がして、ゾロが傍らにたたずむ気配がした。
「たしぎ。」呼ぶ声が優しい。
「お前、もうオレを追うな。」
今、なんて言ったの。
声にならない問いかけは、ロロノアには届かない。
うつぶせになったまま、信じることを拒否した身体は、
確かめるすべもなく、そのまま、眠りに落ちていった。
*******
スモーカーは、窓の外に目をやる。
船の外に動く人の気配を察して、甲板へ出る。
麦わらの一味の剣士の姿を認め、カッと頭に血が上る。
煙に姿を変え、地上に降りた男の後ろに立つ。
「テメェ、海軍の船に忍び込んで、何してやがる。
このまま、何事もなく帰れると思うなよ。」
スモーカーの脳裏に一瞬、たしぎのことが浮かんだ。
その言葉に、ゆっくりと振り向いた男は、
無言で、刀を一振り抜くと、まっすぐにスモーカーへと向ける。
ゆらりと、全身から冷たい炎が上がったように見えた。
「お前、あいつを守れんのか。」
男の気迫に、戸惑いを覚えながら答える。
「・・・あたりまえだ。」
「その言葉、忘れんなよ。」
魔獣と呼ばれたその男の目は、冷たく、そして、苦しそうに見えた。
男は、すっと刀を収めると、振り返って歩き始める。
スモーカーはその気迫に、追うこともせずに、男が姿を消した先を、
難しい顔で、ただじっと睨み付けていた。
*******
己の熱を冷ますかのように、ゾロは歩いた。
ただ、行くあてもなく、歩き続けた。
キンと頭が冴える。
木々のざわめきも、小動物の走り去る音も、虫の蠢きまでもが、
張り詰めた気でビリビリと感じとっていた。
ただ一人、あいつのぬくもりだけは、ぼやけちまって上手く思い出せない。
これで、よかったのか?
幾度となく、繰り返した質問を自分に投げかける。
何処からも、答えは返ってこない。
この血が、どれだけ流れようと、構わない。
あいつが傷つくのでなければ。
「シナナイデ・・・。」
約束はしねェ。それが、お前を悲しませるのか。
ならば、この手を離す。
今、ここで。
あいつには、最後まで甘えてしまった。
別れの言葉も、面と向かって言えずに。
なさけねェ。
もう、忘れてしまえ。
空を仰げば、折れそうな有明の月が、細々とした輝きを放っている。
引きずる想いが、重くまとわりつく。
振り切るように、再び歩き出す。
その先に、ようやく戻るべきサニー号の姿が見えてきた。
眠りてェ。
音もたてずに、部屋に戻り、
世界を遮断するかのように、ひたすら眠り続けた。
〈完〉